イコールアース図法、国連決議で地図は変わる?面積は正しく形はゆがむ
国連総会が9月4日に採択したのは、イコールアース図法を普及・奨励する決議です。世界中の地図や地図アプリが直ちに切り替わる決定ではありません。面積比は正しくなりますが、形・角度・距離のゆがみは残ります。
編集イメージ(AI生成)。国連会議や実在する展示施設を撮影したものではありません。
9月4日の国連決議で決まったこと
国連総会は2026年9月4日、世界地図で大陸の面積をより忠実に表す図法の普及を促す決議を採択しました。報道された投票結果は賛成164、反対1、棄権6で、日本も賛成しました。反対は米国でした。
ただし、ここで決まったのは「明日からメルカトル図法を禁止する」ということではありません。決議が求めるのは、政府、学校、国際機関などが、世界全体の面積を比べる場面でイコールアース図法のような正積図法へ移ることです。各国の教科書や民間サービスを一斉に変更する期限は、9月5日時点の報道では示されていません。
今回の直接のきっかけは、トーゴを中心とするアフリカ諸国の働きかけです。従来の世界地図ではアフリカが相対的に小さく見え、その印象が教育や報道にも残るという問題が提起されました。
アフリカとグリーンランドが同じくらいに見えた理由
よく使われるメルカトル図法は、1569年に航海のために考案されました。狭い範囲の角度を保つため、地図上で一定の方角を追いやすい一方、赤道から極へ近づくほど面積が大きく引き伸ばされます。
そのため、メルカトル図法の世界地図ではグリーンランドとアフリカが近い大きさに見えることがあります。しかし実際の面積は、アフリカがグリーンランドのおよそ14倍です。アフリカが縮んだというより、高緯度のグリーンランドが大きく拡大表示された結果です。
丸い地球の表面を切れ目なく平面へ移すと、面積、形、角度、距離、方位のすべてを同時に正しく保つことはできません。図法の違いは「正しい地図と間違った地図」の二択ではなく、何を正しく見せるために、何をゆがめるかの違いです。
編集部作成の概念イメージ(AI生成)。正確な地理測定や座標変換には使えません。
イコールアースは面積を守り、形を少し譲る
イコールアース図法は2018年にBojan Šavrič、Tom Patterson、Bernhard Jennyの3人が発表した世界地図用の図法です。ロビンソン図法に似た、左右がゆるく湾曲する形を持ちながら、陸地や海の相対的な面積比を保つ正積図法です。
一方で、正積だから万能という意味ではありません。Esriの技術文書では、イコールアース図法にも形、方向、角度、距離のゆがみがあると説明されています。
| 比べる点 | メルカトル図法 | イコールアース図法 |
|---|---|---|
| 正しく保つもの | 局所的な角度 | 地域どうしの面積比 |
| 大きくゆがむもの | 高緯度地域の面積 | 形・方向・角度・距離 |
| 見た目 | 長方形で極側が大きい | 左右が湾曲し、大陸の比率が現実に近い |
| 向いている用途 | 航海、方角を追う地図、拡大したウェブ地図 | 世界の人口、森林、感染状況など面積比較を伴う分布図 |
| 向かない判断 | 国や大陸の広さの比較 | 最短距離や正確な方角の判断 |
たとえば「アフリカとヨーロッパの人口密度を色分けして比べる」なら、面積比を守るイコールアース図法が適しています。反対に、船が一定の方角を保って進む航路を描くなら、メルカトル図法には今も役割があります。
学校や地図アプリはすぐ切り替わるのか
結論は、一律には切り替わりません。変わりやすいのは、教室や報道で世界全体の国土面積を見せる地図、人口・気候・資源を比較する主題図です。面積の印象が目的に直結するため、正積図法を選ぶ理由がはっきりしています。
一方、次の地図までイコールアースへ統一すると使いにくくなります。
- 街路を拡大して曲がる方向を確認する地図
- 航海で一定の方角を追う海図
- 一地点からの距離や方位を比べる地図
- 立体の地球儀として回転・拡大できるデジタル地図
つまり「Googleマップが使えなくなる」「学校で習ったメルカトル図法が誤りになる」という話ではありません。世界全体を一枚で見せる初期画面、拡大後の街路図、航空ルートの画面では、必要な図法が異なります。サービス側の変更予定は各社の正式発表を待つ必要があります。
編集イメージ(AI生成)。特定の製品・地図サービスの画面ではありません。
見たいものから10秒で図法を選ぶ
地図の名前を覚えるより、目的を先に決めると迷いません。
- 国や大陸の広さを比べたい → イコールアースなどの正積図法
- 世界の統計を色で比べたい → 面積が値の印象を左右するため正積図法
- 一定の方角で進む線を見たい → メルカトル図法
- ある地点からの距離と方位を見たい → 正距方位図法
- 全体の形を直感的に見たい → 3D地球儀
今回の国連決議が変えようとしている中心は、1と2の場面です。メルカトル図法の用途そのものを消すのではなく、面積比較に向かない地図が「標準の世界像」として使われ続ける状態を見直す動きだと捉えると正確です。
ニュースの世界地図を誤読しない3つの確認
同じ統計でも、背景の世界地図が違えば印象は変わります。人口、森林面積、二酸化炭素排出量のように地域の広さと色を重ねる図では、凡例だけでなく図法名も確認してください。図法名が書かれていない場合は、グリーンランドや南極が極端に大きく描かれていないかを見ると、メルカトル型かを推測する手掛かりになります。
また、地図上の直線をそのまま「最短ルート」と読まないことも大切です。球面上の最短経路は、平面地図では曲線に見える場合があります。国土の大きさを比べるなら正積図、方角を追うなら正角図、地球全体の位置関係を見るなら地球儀というように、図の目的と図法が合っているかを確認すると誤解を減らせます。
注意したいのは、画像検索で見つけた一枚だけでは図法名や縮尺が分からない場合があることです。出典や凡例を確認できない地図は面積比較の根拠にしないでください。平面図だけで判断しにくければ、別の方法として3D地球儀で位置関係を見てから、正積図で面積を比べると理解しやすくなります。
確定したことと、まだ決まっていないこと
| 9月5日時点で確定 | まだ決まっていない |
|---|---|
| 国連総会が普及・奨励の決議を採択 | 日本の教科書が切り替わる時期 |
| 賛成164、反対1、棄権6と報道 | 各地図アプリの具体的な変更予定 |
| イコールアースは面積比を保つ正積図法 | すべての用途で採用されるか |
| メルカトルは高緯度ほど面積が拡大 | 海図や街路図が置き換わるか |
ニュースの見出しにある「正しい世界地図」は、面積比について正しいという意味です。形や距離まで完全に正しい一枚の平面地図が登場したわけではありません。今後の変更を確認するときは、国連決議そのものと、文部科学省・教科書会社・地図サービス各社の発表を分けて見るのが近道です。
次の行動は、使っている地図をすぐ捨てることではありません。まず用途を確認し、世界の面積比較なら正積図へ、街路や方角の確認ならその目的に合う地図へ切り替えてください。
参照した資料
著者:ノオ